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【民法改正】配偶者居住権の新設と生命保険への影響 ~相続~

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民法改正により相続の考え方や生命保険の活用にも影響が出そうです。

今国会で審議中のいわゆる相続分野の改正案では、目玉の一つとして、新たな権利である「配偶者居住権」の創設が提案されています。

相続と生命保険は関連性が強い分野ですので、今回の「配偶者居住権」が新設されることによって、生命保険へどのような影響があるのかを考えたいと思います。

1.配偶者居住権について

「配偶者居住権」とは、相続が開始時に被相続人(亡くなった人)の所有していた住宅に住んでいた配偶者が、その配偶者が亡くなるまでの間、賃料等を払わずに利用し続けることを認める権利です。

現行の相続制度においても、配偶者は不動産の所有権を得ることでそのまま住み続けることができますが、住まいを確保するために所有権を取得した場合に、その分預貯金などの取り分が少なくなり生活資金を確保できない可能性がありました。

そこで「配偶者居住権」という所有権と比べて相続時の評価額が低くなる権利(売却や譲渡の権利は無い)を新設することで、他の資産の取り分を増やし、老後の生活資金などを確保しやすくなるというわけです。

<配偶者居住権のイメージ:3人家族>

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◆夫の資産

①実家(土地建物込みで2,000万円)
②預金2,000万円

を妻・子が相続するケースだと、これまでの相続制度であれば、夫婦で実家暮らしをしていたとしても、その実家の所有権が夫になっている場合、夫亡き後そのまま妻の所有物になるわけではなく、相続で取得する必要があります。

ですがその場合、配偶者である妻がこれまで通り実家で生活するために実家を相続しようとすると、

【法改正前】

◆妻の相続分

 実家(評価額2,000万円)
 預金 0万円

◆子の相続分

 預金 2,000万円

となります。

2人の相続分の価値としては等価となりますが、実家を相続した妻はこれまで通りの生活は送れるものの、現金は何ももらえないこととなります。

もしも預金が夫婦の老後の生活費として貯めていたものであっても、長男が法定相続分の取得を主張した場合、このケースでは長男が2,000万円を相続できてしまいます。

【法改正後】

一方で、今回新設が予定されている「配偶者居住権」を取得すれば、

◆妻の相続分

 実家(評価額1,000万円)
 預金 1,000万円

◆子の相続分

 実家(評価額1,000万円)
 預金 1,000万円

実家の所有権にこだわる必要はなくなっているので、「実家の所有権と預金をそれぞれ半分ずつ」など預金を多く取得しやすくなるのです。

また配偶者居住権を取得した場合には、その期間に修繕等する場合であっても、所有権者の許可は不要であるため、安心して住み続けることが出来るのです。

※この改正は「公布日から2年以内の政令で定める日」からの施行が提案されており、原則の施行日(公布日から1年以内の政令で定める日)より長い周知期間がとられています。

 

<不動産の評価方法について>

今後併せて注視していきたいのが、配偶者居住権や居住権付きの不動産の評価方法です。評価が必要なケースとしては、遺産分割や遺贈、相続税など相続時の計算のほか、不動産の担保評価などのケースが考えられます。

法案のベースとなる要綱案を取りまとめた法制審議会民法部会では、賃料相当額をベースにした具体的な計算例のほか、より簡易に固定資産税評価額を基にした評価方法などが示されていますので、具体的な評価方法については今後の実務動向を注視していきたいと思います。

2.生命保険を活用した相続対策について

死亡保険金は、以下の理由により、相続対策に非常に効果的とされています。

① 代償分割への対策

② 保険金は受取人の固有の財産とすることが可能

③ 「法定相続人×500万円」の非課税枠がある

<解説>

①「代償分割」という言葉はなかなか馴染みがないものと思いますので、具体的な事例で考えてみたいと思います。前述の事例とは異なり、被相続人の財産が不動産に偏っている場合を想定してみるとわかりやすいと思います。

◆夫の資産

・実家(土地建物込みで3,000万円)
・預金1,000万円

この場合、実家(3,000万円)を妻が取得した場合、子は現金を1,000万円しか取得できないこととなるため、妻は1,000万円の現金を子に支払い、相続額を同額にする必要があります。

しかし、突発的に夫が亡くなってしまった場合など、纏まった金銭の用意が無い場合も多く、そういった際への備えとして例えば「1,000万円の死亡保険金を妻にかけておく」といった生命保険を活用した相続対策が有用となるのです。

②ここで、上記のようなケースでは、相続財産である「不動産3,000万円」と「現預金1,000万円」と「死亡保険金1,000万円」の計5,000万円が相続の対象となるのでは?と考える方がいらっしゃるかもしれませんが、“死亡保険金は受取人固有の財産”とされています(相続とは切り離して受取人が取得できるもの)。

つまり、相続財産としてはあくまで不動産と現預金の合計4,000万円が対象となりますので、前述の例では1,000万円の保険金が相続対策として有効になるのです。

3.生命保険の活用への影響

これまでの相続制度では、現金と不動産を遺族が取得する場合、不動産を取得した遺族はその分現金の取得ができなくなる可能性がありました。

こうした問題(現金の相続が偏る)への対策として、生命保険会社各社は死亡保険金を活用した相続対策(現金を取得できない遺族へ保険をかける)を提案しておりましたが、今回の民法改正によって法律で是正されてしまうことになるため、保険営業にとっては少し逆風となる可能性があります。

ただし、生命保険金を活用した非課税枠が使えることには変わりありませんので、セールストークの話法が減ってしまった、というところに留まるのかもしれません。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。

相続と生命保険は密接に関連しており、その背景にある民法が改正されることによって具体的な対策方法などに直接影響を及ぼすということが分かっていただけたのではないでしょうか。

ちなみに、配偶者居住権は2020年4月1日は施行となっています。

今回の法改正は相続を受ける側がキャッシュ不足で困窮することを防ぐための対策ともとれますが、やはり日ごろから、自助努力で貯蓄を行っていくこと姿勢が大事だと思います。

“相続”が“争族”にならないよう、十分な知識と準備を持って対策を進めておきたいと思う今日このごろです。

この記事をお読みになった方が、少しでも有益であると感じていただけたら嬉しいです。 

 

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